最大安定傾斜角度の計算

 

最大安定傾斜角度計算の公式例

最大安定傾斜角度の算出の方法は、重心モーメントの算出による方法と、重心移動実測による算出方法がありますが、ここでは重心移動実測による算出方法をご紹介します。

最大安定傾斜角度に関する保安基準については こちら 、審査事務規程については こちら

そのうち時間を見て重心モーメントによる算出方法もご紹介させていただく予定です。

 

まず重心移動実測値による、最大安定傾斜角度を算出するに当たって、必要なデータは以下の通りです。

右前輪荷重 wfr 空車時における右前輪の重量 kg
左前輪荷重 wfll 空車時における左前輪の重量 kg
右後輪荷重 wrr 空車時における右後輪の重量 kg
左後輪荷重 wrl 空車時における右左後輪の重量 kg
軸距 L ホイールベース mm
前輪輪距 Trf 前輪のトレッド mm
後輪輪距 Trr 後輪のトレッド mm
タイヤ有効半径 R タイヤ有効半径 mm
前軸の揚程 h 水平状態から前輪を揚程する距離 600mm以上であること
h時の後軸重 wr’ h時の後軸重量 kg
上表中、左右の輪荷重において重量差が著しい相違がないものにあっては、それぞれ前軸重、後軸重の1/2と置き換えることができます。

ただし、サイドカーなどのように左右非対称なものに関しては、それぞれの輪荷重が必要となります。

また、タイヤ半径が前後で異なる場合においては、その平均値にて算出するものとし、前軸の揚程については600mm以下の揚程である場合正確な重心移動量が測定できないため、構造上等の問題がない限り、600mm以上揚程するものとします。

 

これにより算出あるいは測定されたデータから、重心後 H を算出します。

H=R+ \frac{L(wr'-wr) \sqrt{L^2-h^2}}{w \times h}

 

引き続き、安定幅 B を算出しますが、その前に前輪接地面と後輪接地面を結ぶ線が車両中心線に対してなす角度を算出します。

\tan\alpha=\frac{Trr-Trf}{2L}

これは、弧度法のラジアンで算出されていますので、度数法の度に変換します。(関数電卓では Deg とか degrees)

さらに10進法から度分秒に変換します(関数電卓では °′″ など)

これによって算出された α を cos α として計算します。

前後においてほとんどトレッドに差がないような車両ですと、1.000に近い数値となるかと思います。

小数点以下第三位で四捨五入をして、1.000になるような数値であれば、この値は1として差し支えありません。

ここで算出した数値、cos α を使用して、左右それぞれの安定幅を算出していきます。

Br=\frac{\cos \alpha (wfl \cdot Tf+wrl \cdot Tr) }{w} …右安定幅

Bl=\frac{\cos \alpha (wfr \cdot Tf+wrr \cdot Tr)}{w} …左安定幅

 

これより、最大安定傾斜角度 tan βr 、 tan βl の算出を行います。

\tan \beta =\frac{Br}{H} …右安定傾斜角度

\tan \beta =\frac{Bl}{H} …左安定傾斜角度

ここで算出された数値を逆正接関数で計算します。(関数電卓では、asin とか sin-1

これによって算出された数値もラジアンとなっておりますので、前述した α と同様に度数法(deg、degrees)へ、さらに10進数から度分秒( °′″ )へと変換します。

 

左右で数値が異なる場合は、当然数値の低い方で判断することとなりますが、基準となるのは、車両重量 w と、車両総重量 W において、

\frac{W}{w}>1.2 の場合 ・・・35度以上であること

\frac{W}{w}\leqq 1.2 の場合 ・・・30度以上であること

 

ただし、上記基準のほか、側車付二輪自動車においては 25 ° 以上であること、また最高速度20㎞/h未満の自動車にあっては 30 ° 以上であることとなっている他、けん引自動車の場合、連結状態で 35° 以上 であることとなっております。

 

計算は面倒臭いかもしれませんが、採取するデータが少ないため、重心移動実測の方が楽では無いかと思います。

 

改造又は組立申請時にそのまま使用できるひな形を 取扱商品 お役立ちツール のページにアップロードしておきます。

 

次回モーメント法による算出方法をご紹介いたしますので、しばらくお待ちください。

 

 

 

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