トライクへの改造

 

トライクへの改造については、「荷重分布」、「最大安定傾斜角度」、「制動能力」、「最小回転半径」の性能・能力計算のほか、「車枠」、「動力伝達装置」、「走行装置」、「緩衝装置」、「制動装置」の強度検討が必要となります。

一部、スイングアーム部分を変更して改造されたトライクにあっては、「車枠」の強度検討書を省略できるものもあります。

こちらでは、性能・能力計算については、性能能力等計算書用 のページにて解説済みとなっておりますので、各強度検討について解説を行っていきたいと思います。

 

その前にトライクへの改造として、覚えておきたいことについて何点かご説明させていただきます。

 

まずトライクの定義ですが、トライクの場合駆動輪が二輪以上であることが条件となり、後輪一軸が駆動する場合ですと、同じ「側車付二輪自動車」とはなりますが、サイドカーなどと同じ扱いとなってしまいます。

これは、免許の面でも同様で、外見がトライクであっても駆動輪が一輪しか無い場合であれば、それはサイドカーと同等とみなされるため、ヘルメットの着用は勿論のこと、その排気量に応じた自動二輪免許が必要となるということです。

まだ、過渡期といえる状態の為、明確な定義としては、前輪二輪で後輪一輪のタイプで、さらにバーハンドルではなくステアリングを装着しているもの以外の後輪一輪のみで駆動するタイプの三輪車はサイドカーと同じ扱いとなります。

逆を返せば、サイドカーのような形であっても、駆動力が前輪以外の残り二輪に伝わっているのであればトライクであり、後輪が一輪でも丸いステアリングを装着している後輪一輪で駆動する三輪車もトライクであるということです。

 

トライクであれば、普通自動車の免許があれば乗ることが出来、ヘルメットの着用も今の所は免除されております。(安全のため装着をお薦めしますが・・・)

 

一番簡単な構造のトライクといえば、リアのアクスルシャフトを左右連結したものにして、スプロケットやディスクブレーキなどをそのまま装着し、スイングアームも標準車のもののまま製作するものがありますが、バンクしないため旋回能力がスポイルされており、また通常の自動車の後輪のデフロックをした状態と変わらないため、乗り味は非常に危険なものとなります。

トライクは普通免許で乗ることが出来る面から、大排気量車などで製作されることが多く、加速力は二輪車の大排気量車よりも多少劣る程度のものですので、実際この手のトライクでカーブを曲がりきれないなどの事故が多発しております。

 

その一部を解消したものが、後輪をシャフトでは無くディファレンシャルギア(差動装置)を用いたもので、内輪差に対応しており幾分戦術のものよりも曲がりやすくなってはおりますが、旋回の要となるのは前輪であることに変わりは無く、これもまたよく見られる改造ですが、後輪のタイヤ幅を太くするケースが多いため、後輪のタイヤの接地面積と比較し、前輪の接地面積が圧倒的に少なく、高速域に於いては曲がりづらいという現象もさほど改善されておりません。

比較的改造も容易で、V-MAX 等シャフトドライブの車両では、軽自動車用のホーシングなどを利用して改造されている車両も存在します。

しかし、スイングアーム部分が左右でリジッドとなっているものにあっては、基本的にはバンクも出来ず、また左右を独立させている場合に関してはスイングアームの円運動の観点から、バンクさせることにより静止時に車両中心線に対して垂直を保っている後軸も角度を持ってしまい、ステア効果を出してしまいます。

ドライバーが乗って走行している状態でスイングアームがピボット部分を基点として水平になるようにセッティングすることで多少の改善は見られますが、走行パターンは一通りでは無いため、あくまでも妥協点にしかなりません。

 

これらの負のジオメトリーを解消するべく製作されているのが、IFS 〈独立懸架)方式のトライクとなりますが、構成する部品点数も多くなり、スイングアームは機能をなくし、サスペンション方式も変更となるため、構造的にも強度検討書を作成するにも大改造となってしまいます。

アライメントなども細かく調整できるものが多いため、乗り味も前述のものよりもはるかに良くはなるでしょうが、その分正解を出すには苦労することとなると思います。

 

また、何台かトライクを製作されたことのある方であれば、ご自身の発想でつくり上げることも可能かと思いますが、よほどサスペンション関係などに精通していないようであれば、改造という範疇でチャレンジすることはお薦めできません。

 

販売されているキットの物を利用し、不具合のある点を修正してくというのが一番現実的な方法かと思います。

 

この3種が現在主流となっているトライクかと思います。

この他、自動車用のエンジン/ミッションを装着したものなども存在します。

 

また、蛇足となりますが、後輪のトレッドが400mm以内であって、車体をバンクさせて旋回する形状のものであれば、装着輪数が3輪でもトライクとはなりませんので、おしりおき下さい。

 

ブレーキに関しましては、サイドカーのブレーキに関する基準と同等で、平成11年7月以降に製作された車両は、フロントブレーキ若しくはリアブレーキと追加した車輪が連動してかからなければなりません。

通常は後輪ブレーキを連動、あるいはディファレンシャルケースにローターを固定して、左右同時に制動されるような構造になっているかと思いますが、フロントブレーキと連動させて後輪も同時に掛かるようなブレーキシステムであれば、高速ブレーキの連動ブレーキとしての計算が必要となります。?

 

ただし、平成23年6月17日(平成21年6月18日以降に型式指定を受けた車両を除く)以降に製作された車両をトライクに改造する場合は、現在のところ全車「制動能力試験」の対象となります。

 

以降、「車枠」 「動力伝達装置」 「走行装置」 「緩衝装置」 「制動装置」 について、順に解説していきます。

 

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